ヴァルテル・マッサ

ピエモンテ州南東部にあるトルトーナの丘陵地帯。知る人ぞ知る素晴らしいワインの生産地だ。ここで栽培されている土着品種ティモラッソは、そのレアさと同じくらいインパクトのある表現力をもったブドウで、わずか50ヘクタールでしか栽培されていない。ヴァルテルは今から約20年前、実質的には見捨てられた存在だった古くからあるこの土着品種ティモラッソに注目し、この品種が素晴らしいワインを生み出すだろうことを信じて疑わなかった。ティモラッソのアロマを最大限に抽出するため様々な研究を重ね、最終的にシュール・リー製法を用いてステンレスタンクで長期熟成させることで、ティモラッソのポテンシャルを引き出すことに成功した。『コッリ・トルトネージ・ティモラッソ』が原産地呼称を得るのに15年の歳月を費やしたが、その成果は彼のワインを味わえばすぐにわかる。

ヴィニェーティ・マッサではティモラッソの3つのキュヴェ“デルソーナ”、“コスタ・デル・ヴェント”、“ステルピ”を生産している。急勾配に位置する8ヘクタールの畑で収穫されたティモラッソは、発酵前に数時間マセラシオンを行い、発酵にはステンレスタンクのみを使う。こうして作られたワインは酸味、アルコールそしてボディがバランスよく凝縮された贅沢ともいえる味わいを生み出す。特にティモラッソは長期熟成に耐え年月とともに力強く、しっかりとした洗練されたワインとなるのが特徴的だ。

またティモラッソばかりが有名だが、彼がティモラッソと同じくらい情熱を傾けているのがバルベーラである。アルバ地区やアスティー地区とはまったく違う、酸がしっかりした土地をよく表現した繊細なバルベーラを造っている。ほかにもクロアティーナ、フレイザ、モスカートなどで洗練されたワインも生産している。

彼のワインは今や多くのガイドブックでも高い評価を得るまでになったが、最も称賛するべきは生みの親であるヴァルテル自身であろう。彼はもはやピエモンテ州でも数少ないワイン革命家の一人と言っても過言ではない。